2019年4月1日より、中西照幸(元日本大学生物資源科学部獣医学科教授)がゴトー養殖研究所・副社長/研究開発担当取締役に就任いたしました。
【我が国の養殖の現状】
私は学生時代より長い間日本の水産業は質と量において世界のトップだと考えていました。ところが、20年前にノルウェーの養殖事情を視察した際に大変なショックを受けました。
例えば、私の専門の魚類ワクチンの分野についてみれば、ノルウェーにおいては1993年以降アジュバントワクチンの登場により抗菌性薬剤の使用が激減しています。一方、我が国では治療から予防への転換はノルウェーに比べ10年以上遅れ、2005年頃よりやっとワクチンが抗菌剤の販売額を上回るようになりました。しかし、多魚種少量生産という我が国の養殖業の特性などにより、予防に主眼を置いた魚類の防疫対策においてはまだ多くの課題を抱えています。
【世界の潮流】
昨年秋にノルウェーを訪問した際には、給餌、活魚の移動、死魚の取り上げ、ワクチン接種、養殖漁場の監視・観察における機械化・自動化とITの活用など養殖技術の高度化がさらに進んでいることに驚きました。右の写真はノルウェーの養殖企業の事務所で海上イケスの中のサケの行動を観察している様子です。
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、健康志向からもヘルシーな魚が注目され、中でも寿司を中心とした和食ブームが世界中で巻き起こっています。寿司ネタといえば、これまでマグロやタイが中心でしたが、最近はサーモンが首位を占めるようになりました。これは高品質かつ美味なサーモンを低価格で生産し新鮮な状態で消費者に届ける技術が確立されたためです。
既に我が国でもマグロ養殖において最新の技術を導入した大型イケスを用いた養殖が開始されており、また大規模なニジマスの完全閉鎖式陸上養殖施設の設置が進んでおり、新しい養殖への夢が拡がっています。
ノルウェー視察
【現場に役立つ仕事】
私は漁民のための研究者になると宣言し理学部から水産学部の大学院に進学したわけですが、研究所や大学では専ら基礎研究に没頭してきました。
今後はこれまでの反省も込めて、現場の状況を学びながら養殖業者の皆さんの要望に沿った研究開発・サービスを心がけ、社員の皆様とともに環境に配慮し持続可能な養殖を目指していきたいと考えています。
副社長/研究開発担当取締役・中西 照幸
(研究開発担当 元日本大学生物資源科学部獣医学科教授)
2019年~ ゴトー養殖研究所 副社長/研究開発担当取締役に就任
【経歴】北海道大学理学部卒業後、同大学院水産学研究科博士課程単位修得後退学、同大にて水産学博士取得。水産庁養殖研究所病理部免疫研究室長を経て、日本大学生物資源科学部獣医学科教授、獣医学専攻主任、動物医科学研究センター長などを務めた。
これまでに、日本魚病学会評議員・編集委員、日本獣医学会評議員、農林水産省、厚生労働省、文部科学省の各種委員や審査員を歴任。現在、日本比較免疫学会会長。平成4年日本水産学会賞(奨励賞)、平成18年日本比較免疫学会賞、平成29年日本魚病学会賞受賞。
専門は魚類免疫学で、Fish & Shellfish Immunology, Veterinary Immunology & Immunopathology、Developmental Comparative Immunology, Frontiers Immunologyなどの国際雑誌の編集委員として活躍している。
The Fish Immune System (Academic Press)、水産用ワクチンハンドブック(厚生社恒星閣)などの著書がある。